CasePrep

コンサル思考の教科書

← 一覧に戻る

MECEとロジックツリー

読了目安:7

MECEとは何か

MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)とは「モレなく、ダブりなく」を意味する、コンサルタントの思考の基本原則です。マッキンゼーが広めたこのコンセプトは、複雑な問題を整理するための「知的な道具箱の整理術」です。

🗄️

引き出しで考えてみよう

部屋の服を整理するとき、「Tシャツ」「ズボン」「下着」「アウター」という引き出しに分けると完璧です。

モレ(漏れ)があると:靴下の引き出しがなくて、床に散らばる。
ダブり(重複)があると:「Tシャツ」と「夏服」の両方の引き出しに同じシャツが入る。

MECEとは、どの服も1つの引き出しにぴったり収まる状態のことです。

MECE = Mutually Exclusive(互いに排他)+ Collectively Exhaustive(全体を網羅)

ビジネスで使うと:売上低下の原因を「価格」「数量」「顧客数」「購買頻度」に分解したとき、これらが重なっていないか(ダブり)、他に抜け落ちている要因はないか(モレ)をチェックする習慣がMECEです。

練習問題

「顧客をMECEに分類してください」と言われました。「若者・中年・高齢者」という分類はMECEですか?

考え方のヒント

年齢での分類はMECEの条件を満たせます。「若者(〜29歳)・中年(30〜59歳)・高齢者(60歳〜)」と境界を明確にすれば、モレなく(全年齢をカバー)ダブりなく(各人が1つの区分にのみ属す)なります。重要なのは「境界を明確にすること」です。「若者・中年・お年寄り」では境界が曖昧でMECEとは言えません。

モレとダブりが起きるとどうなるか

⚠️

モレ(漏れ)が起きると

原因の一部を見落とすため、対策を打っても問題が解決しない。「価格と品質を改善したのに売上が回復しない…実は配送の遅さが原因だった」という事態になります。

  • 重要な要因を見落とす
  • 対策が的外れになる
  • クライアントの信頼を失う
⚠️

ダブり(重複)が起きると

同じ要因を二重にカウントするため、インパクトを過大評価してしまう。「顧客数」と「新規顧客数+既存顧客数」を別々に数えると、同じ人を2回カウントします。

  • 市場規模の過大評価
  • コスト削減の過大見積もり
  • 施策の優先順位が狂う

サッカーで例えると

守備の担当エリアを決めるとき、モレがあると「誰もマークしていない選手」が生まれます。ダブりがあると2人が同じ選手を追いかけ、別の選手がフリーになります。MECEなエリア分けで穴のない守備ができます。

練習問題

ある店の「昨日の売上が落ちた原因」を分析します。原因候補として「天気が悪かった」「競合がセールをやっていた」「自店が値上げした」「スタッフが少なかった」を挙げました。これはMECEですか?

考え方のヒント

この列挙はMECEではありません。「天気」と「スタッフ不足」は独立した要因ですがダブりはないものの、「売上 = 客数 × 客単価」という式でまず2軸に分けてから原因を探す方がMECEです。MECEでない列挙では重要な要因(例えばチラシ配布の中止)を見落とすリスクがあります。まず構造で分け、そこに原因を当てはめる順番が正しいアプローチです。

ロジックツリーの種類:Whyツリー vs Howツリー

MECEを実際に使う道具がロジックツリー(Logic Tree)です。問いの種類によって、2種類のツリーを使い分けます。

Whyツリー(原因分析)

問い:なぜ売上が下がったのか?

原因を掘り下げる。現状の問題を診断するときに使う。

売上が下がった
なぜ?
単価↓
数量↓
なぜ単価↓?
値下げ
ミックス変化

Howツリー(施策立案)

問い:どうすれば売上を上げられるか?

解決策を展開する。打ち手を考えるときに使う。

売上を上げる
どうやって?
単価↑
数量↑
どうやって単価↑?
値上げ
高付加価値化
💡

使い分けのルール

「今何が起きているか」を解明したいときはWhyツリー。「これからどうするか」を考えたいときはHowツリー。面接ではWhyツリーで原因を特定してからHowツリーで施策を出すという流れが典型的です。

練習問題

「ECサイトの会員数が伸び悩んでいる」という課題に対し、WhyツリーとHowツリーをそれぞれ描いてみてください。

考え方のヒント

Whyツリーでは「なぜ会員数が伸びていないか」を分析します。会員数増加=新規登録数-退会数に分解し、新規が少ないなら「認知不足か登録障壁か」をさらに掘り下げます。原因が特定できたら今度はHowツリーで「どうすれば新規登録を増やせるか」という施策を展開します。Whyで診断し、Howで処方するという2段階の思考フローが典型的なコンサルの問題解決プロセスです。

ロジックツリーの実例:売上低下の原因分析

コンビニチェーンの売上が前年比10%減少しています。Whyツリーで原因を分解してみましょう。

売上 = 単価 × 数量
単価の変化
定価変更
値下げセール増加
ミックス変化
低単価商品比率↑
数量の変化
客数変化
新規客↓ or 離反↑
客単価内数量
1回購入点数↓
🔍

分析のポイント

このツリーのMECEチェック:売上 = 単価 × 数量 は完全に網羅的でダブりなし(数学的に成立)。次に単価の下位分解、数量の下位分解それぞれでMECEを確認する。「定価変更」と「値下げセール」は別要因なのでダブりなし。これがロジックツリーを正しく使う感覚です。

練習問題

コンビニチェーンの来客数が前年比15%減少しています。Whyツリーで原因を2層まで分解してください。

考え方のヒント

まず「来客数 = 新規客数 + リピート客数」に分解(第1層)します。新規客が減った場合は「認知度低下」「立地的な障害」「競合店への流出」に分解(第2層)、リピート客が減った場合は「来店頻度の低下」「退会・引越し」に分解します。数学的に成立する式(新規+リピート)で第1層を決めることでMECEが担保され、第2層以降の分析が的確になります。

よく使うMECEの切り口

MECEな分解を毎回ゼロから考えるのは非効率です。以下の「定番の切り口」を引き出しとして持っておくと、面接でも実務でも素早く使えます。

切り口分解の例使いどころ
売上 = 単価 × 数量単価:定価・値引き率 / 数量:客数・購買頻度・1回購入量収益分析・価格戦略すべて
顧客セグメント新規顧客 vs 既存顧客 / BtoB vs BtoC / 年齢層別顧客分析・マーケティング
地理的分解国内 vs 海外 / 都市 vs 地方 / 東日本 vs 西日本事業展開・地域戦略
時間軸短期(〜1年) vs 中期(1〜3年) vs 長期(3年〜)施策ロードマップ
固定費 vs 変動費コストを性質で分類コスト構造分析
バリューチェーン調達→製造→物流→販売→サービス業務プロセス分析
4PProduct・Price・Place・Promotionマーケティング施策
人・モノ・金・情報経営資源の全体像組織・事業戦略
🧰

引き出しを持つ意味

これらの切り口は「なぜMECEか」という理由が数学的・論理的に成立しています。例えば「売上 = 単価 × 数量」は定義式なので完全にMECEです。一方「品質・価格・デザイン」は重なりやすくMECEが崩れやすい。定番の切り口を使うと安全です。

練習問題

「スマホアプリの月間アクティブユーザー(MAU)を増やす施策」をMECEな切り口で整理してください。

考え方のヒント

MAU=当月に利用したユニークユーザー数なので「新規ユーザーの獲得」と「既存ユーザーの継続利用」に二分するのが最もMECEな出発点です。新規獲得はさらに「認知拡大」「コンバージョン改善」に、継続はさらに「利用頻度向上」「退会防止」に展開できます。このように定義式から出発することで、施策の抜け漏れを防ぎ、リソース配分の優先順位が明確になります。

MECEでない例 vs MECEな例の比較

MECEでない分解(NG)

「売上減少の原因は?」

  • 競合他社の台頭
  • 顧客ニーズの変化
  • 品質の低下
  • マーケティング不足
  • 景気悪化

「競合台頭」と「顧客ニーズの変化」は重なる可能性あり。「景気悪化」が影響するなら顧客ニーズにも影響する。ダブりだらけで分析できない。

MECEな分解(OK)

「売上 = 単価 × 数量」で分解

  • 単価の変化(値下げ・商品ミックス)
  • 客数の変化(新規・既存・離反)
  • 購買頻度の変化
  • 1回あたり購入点数の変化

数学的に「売上 = 単価 × 数量」は完全に成立。さらに数量を客数×頻度×点数に分解。ダブりなく、モレなし。

練習問題

「日本の世帯をMECEに分類する」場合、どのような切り口が考えられますか?それぞれのメリットを考えてください。

考え方のヒント

世帯人数(1人・2人・3人以上)、年収帯(低所得・中所得・高所得)、居住形態(持ち家・賃貸)などの切り口があります。重要なのは、選んだ切り口が「分析の目的」に合っているかです。マーケティング目的なら購買力で分ける年収帯、住宅政策なら居住形態が適切です。MECEかどうかだけでなく「その分け方が問いに対して意味があるか」も常に確認する習慣をつけましょう。

練習問題と考え方のヒント

MECEは読んで理解するより、実際に手を動かして練習することで身につきます。以下の問題でMECEな分解を考えてみてください。

練習問題考え方のヒント定番の切り口
ある飲食チェーンの利益が下がっている。原因を分解せよ利益 = 売上 - コスト。まずこの2軸に分ける。売上はさらに単価×数量に利益の式分解
日本の人口が減少している。要因をMECEに列挙せよ人口変化 = 自然増減(出生数 - 死亡数)+ 社会増減(流入 - 流出)。数学的に成立人口動態の定義
スマホアプリのDAUが下がった。原因は?DAU = 新規インストール数 × 継続率。新規と既存を分ける。既存は利用頻度の低下ファネルとコホート
コスト削減施策をMECEに列挙せよコスト = 固定費 + 変動費。固定費はさらに人件費・家賃・設備費に分解費用の性質による分類
新規市場への参入方法をMECEに考えよ①自社単独 ②M&A ③提携・JV。入り方の手段で分ける市場参入形態の分類
📝

練習のコツ

自分の分解案を書いたら、必ずこの2つを確認してください。

  • モレチェック:「他にない?全部足したら元の問いが100%埋まる?」
  • ダブりチェック:「どれかが重なっていない?同じ要因が2か所に入っていない?」

最初は数学的に成立する分解(利益の公式、人口動態の定義)から練習するのが最も確実です。

🏆

上級者の視点

完璧なMECEは存在しません。「十分にMECEか」を判断するのがプロの仕事です。95%のケースでカバーされていれば実務的には十分。残り5%(例外ケース)に縛られて議論が止まるより、「この分解で進めましょう」と宣言できる決断力も評価されます。

練習問題

「旅行会社の収益改善策を考えてください」と言われました。Howツリーを使ってMECEに施策を整理してみましょう。

考え方のヒント

まず「収益 = 売上 − コスト」という式でHowツリーの第1層を作ります。売上側は「客数を増やす」「客単価を上げる」に分け、さらに客数は「新規顧客獲得」「リピート率向上」に展開します。コスト側は「固定費削減(人件費・オフィス)」「変動費削減(仕入れ・外注費)」に分けます。自分の分解が終わったら、「他に見落としはないか」とMECEチェックをする習慣が本番での完成度を高めます。

この知識を使って練習する →